少女と“魔物”

盲た少女の迷い込んだ森は
それはそれは醜い男の住処
「ここらは醜い魔物が出るらしい」と
男は少女を家に泊まらせた

鏡のない家 少女は気づかぬ
少女の盲た目に彼は気づかぬ
鏡のない家 孤独な男は
自分の醜さをすら知らぬまま

二人暮らしてた

膝を抱えた夜をいくついくつ越えた?
孤独だった二人の幸せの日々
「あなたはうつくしいひと」



盲た少女を捨てた家の兄は
二人が暮らす家を見つけた
「醜い魔物を退治すればきっと
再び僕らは幸せになれる」と…

刺客の突きつけた 刃に映る姿
怯える男をかばう愛した少女
刺客は呼ぶ 彼女を愛妹(いもうと)と
少女の盲た目に気づかぬまま男は

「騙されたのか」と

優しい気持ちで朝を何度迎えた?
気が付けば孤独にもう慣れない男が一人
膝を抱えた夜をいくついくつ越えた?
孤独だった二人の幸せの日々
「わたしの愛おしいひと」

人里離れた林の奥深く
ひっそり寄り添うふたつの墓標

ミュージカル「ファントム」を見ながら浮かんだお話でした。お互いの異変に気づかぬまま幸せに愛し合った二人と、愛故の終幕

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